石川ひとみ 『Tenderly』 、スローバラードのこの曲は同名のビデオタープのテーマミュージックになっている。LP【プライベート】に収録されて、一足早くリリースされています。シングル・カットされた『恋』と一対とみてよいでしょう。
石川ひとみ 『Tenderly』 LP 【PRIVATE...HITOMI】(1983.08.21)
作詞:田口 俊/作曲:林 哲司/編曲:林 哲司
作詞:田口 俊/作曲:林 哲司/編曲:林 哲司
この曲の出だしを聴いて、すぐに尾崎豊の代表作の一つ『I LOVE YOU』を連想しました。
『I LOVE YOU』は1983年12月1日にリリースされた尾崎豊のファースト・アルバム『十七歳の地図』(CBSソニー)に収録されています。
ロック調ばかりではなくバラードも入れたいというプロデューサー須藤の要望があったとか。
困惑した尾崎豊は出だしのI love you を即興で口ずさみ、それを生かして須藤が曲を完成させたという。
尾崎豊 『I LOVE YOU』
出だしが似すぎていますけれど、別に構わないでしょう。
詩の場合でも小説でも、最初の1行がなかなか出てこないものです。出だしで八割方決まってしまう。
曲であれば、最初のワンフレーズがなかなか出来ない。出来てしまえば、あとはその流れで、構成できてしまうものです。
尾崎豊は石川ひとみの後輩である吉川晃司と同じ年ですけれども、どこかでひとみちゃんの歌を聴いていたのではないかな、と想像しています。でもシングル曲ではありませんから、LPレコードを聴いたとしたら、私のような隠れ石川ひとみファンだったかも。
それともビデオ【Tenderly】を見ていた、とか?(ファン的妄想かな...)
まあ、ひっちゃんファンだったかもしれないのだ。追求するのはよそう。
吉川晃司はパーソナリティーを務めるラジオ番組で、自分と同い年の尾崎豊の歌をほめて、是非聴いてみてくれと語ったそうですけど...さて、以前『恋』について、岡田さんの歌詞はアルバム【プライベート】の時には出来ていたけれども、玉置浩二の作曲が遅れて後からシングルカットでリリースされた、という事情を記しました。
『恋』は、愛する気持ちが相手に伝わらないもどかしさをテーマにしているのに対し、この『Tenderly』は心ゆくまでお互いの気持ちを確かめあう、という対極的な内容です。
同じように禁じられた恋のバラード曲という状況設定で、
岡田冨美子は片思いの哀しみを描き、
田口俊は「窓の外が白んできても ずっとずっと 離さないで」と相思相愛の安らぎを描いた。
...表と裏のような関係です。
でも、今回はそれは取り上げず、ほとんど意味的に同じ世界を描いた尾崎の『I LOVE YOU』と少しだけ比較をしてみたい。
石川ひとみはロックを「自分とは合わない歌」として、「私は岩崎宏美さんや南沙織さんのような歌を歌っていきたい」とファンインタビューで語っていました。
それは、もちろんひっちゃん路線としては真っ当なものでしたが、現実にはお姉様たちのようなアイドル名曲にはあまり恵まれず、まみれ系の歌の方が多かった。
この『Tenderly』はまみれ系ですけれども、『まちぶせ』同様に石川ひとみ的転位で、純愛歌として歌い上げています。
けれども、筋金入りよい子のひとみちゃんですから、後輩たちの鏡になるような教科書的な自分の歌い方を破ろうとして取り組んだであろうこの曲...やはり、限界を破り切れていないように思う。
尾崎豊はロックでスタートしていますから、というよりそもそも「よい子」ではないので、そういう面でのメンタルブロックを持っていない。
すでに音楽以外の部分で、乗り越えてきてしまっているから、ノーリミットでこういう歌を歌える。
この辺の違いが、歌の表情に表れているのかな。
歌詞が表象する内容はほとんど同じと言ってよく、状況設定が幾分異なる。それを、
女性の側から石川ひとみが歌い、
男の立場から尾崎豊が歌っている、
...と比較して聴いてみるのも面白いかと思う。
石川ひとみは一連のNuード写真集やカレンダーで心変わりをアッピールし、12月には『裸足でダンス』をリリースして、脱アイドル大人の女を演出するので すが...
結局大人の女になるには、
まみれた歌詞の歌を歌うことでも、
「肌科」の天使になることでもなく、
乗り越えるべきものを乗り越えないとダメなのだ、
...とい うことでしょう。
まあ、それが石川ひとみという方ですから、
越路吹雪にも岸洋子にもならず、
50歳の石川ひとみになろうとしている、わけですね。
相変わらずかわいらしさを失わないひとですけれど、一五一会版「右向け右」や「ラジオデイズ」を歌っているシャンソン年齢にふさわしい歌手として輝いています。
だんだん曲の話から離れて行ってしまいますので、この話の続きは、ファン・ノートの方で、
いずれ取り上げてみたいと思います。
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